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再浮上する「第2プラザ」の影

㈱T&Cフィナンシャルリサーチ 代表取締役 吉田 恒

米議会で超党派による「為替制裁法案」の動きがあると報道されている。ところでこれは、2007年6月に124円から今回の円高基調をスタートさせた動きと重なるものだ。その上で、大げさな言い方をすると、人民元の4割切り上げを求める「第2のプラザ合意」に発展する可能性を秘めたものだろう。

◆キーワードは「ミスアラインメント」
この動きについて一般報道は、「中国の通貨人民元の上昇実現を目的とした超党派による法案をめぐり、速やかな行動を求める考えを示した」と解説している。しかしそれが、どこまでこの動きの「本質」を正確に伝えているかは、じつは微妙だ。
この法案の「本質」は、「中国などの国が為替操作を行っているかどうかについて、財務省に6カ月ごとの判断を求めることはしない代わりに、基本的に不整合な(fundamentally misaligned)通貨を持つ国々を特定するよう求めている」点にあるだろう。要するに、キーワードは為替の不正操作、「アンフェア」ではなく、適正水準からのかい離、「ミスアラインメント」だ。
米通貨政策への議会からの要求が、このように「アンフェア」から「ミスアラインメント」に変わった最初は2007年6月だった。当時は円安・ドル高が124円まで進んでいた局面だったが、この微妙な変化に、当時の日本の通貨当局は敏感に反応した。
2007年6月中旬、一部で「財務省が円安対応策で秘密協議」といった報道が流れた。これこそ、通貨当局内部が、微妙な米国の政策変更の可能性に敏感に反応した結果だった。当時の一般報道も、米国の標的は人民元と解説していたが、当局内ではそれが円安に飛び火し、しかも同じように「ミスアラインメント」がキーワードになった1985年プラザ合意の再現シナリオに向かう可能性を密かに警戒したのだった。
結果的に、この時の円安は2007年6月下旬に124円で終わった。それは、2007年夏から欧米の金融危機が広がり始め、円高への流れが急加速していったためだったが、「影の主役」は、米国の政策変化を察知した日本の通貨当局の円安放置終了だった。
さて、それとほぼ同じ動きが再燃してきたのが、今回の米議会動向だ。「不整合な通貨を持つ国の特定」といった言葉を素直に読むなら、最近複数の米政府関係者から「人民元は4割過小評価」といった発言が出ていることと合わせ、人民元の3-4割といった大幅切り上げの必要性を求める動きになる可能性があるだろう。
整合的な水準からの著しいかい離といった意味で「ミスアラインメント」をキーワードに展開したのが、1985年プラザ合意だった。この当時のドル円は、「整合的な水準」の一つの目安になる購買力平価が、生産者物価基準では180円、輸出物価基準では150円程度だったが、結果的に後者まで円高・ドル安は一方的に進んだ。
さて、現在の生産者物価購買力平価は106円程度、輸出物価購買力平価は70円程度だ。「不整合な通貨を持つ国の特定」となると、円安の許容余地は少なく、それどころか円売りという「円安誘導介入」は、きわめてやりづらくなりそうだ。(了)

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2010.03.25 | コメント(0) | トラックバック(0) | FXレポート

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吉田 恒(よしだひさし)

プロフィール

吉田 恒(よしだひさし)

吉田 恒(よしだひさし)
1962年、青森県生まれ。1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社、2004年1月より同社の代表取締役社長就任。また、投資情報コングロマリット、 T&Cグループの持ち株会社であるT&Cホールディングス取締役にも2004年2月より就任。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。グローバル投資情報「G20マーケットインサイト」の編集責任者。また一般投資家向け為替リアルタイム市況「fx wave」の運営責任者、さらに一般投資家向けの為替および株式講演会を精力的に全国展開している。2000年からの米株バブル崩壊暴落、2002年の円急落、昨年2007年8月の円急騰など大相場予測の精度に定評がある。「わかりやすい、役に立つ、当たる」として顧客満足度の高さではFX界随一との呼び声が高い。

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