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なぜ「雇用ショック」は無視されたのか

㈱T&Cフィナンシャルリサーチ 代表取締役 吉田 恒

3日発表された米11月雇用統計は、事前予想を大きく裏切る結果だったが、その後も米金利、米株は下がらず、むしろ米金利は雇用統計発表前の水準を大きく上回るなど、「雇用統計ショック」は無視されたようになっている。これは、単月の指標結果が関係ないほど、景気指標から見て米金利が極端な下がり過ぎになっていたためではないか。

◆ISM指数でみると「間違った金利低下」
代表的な米景気指標であるISM(米供給管理協会)製造業景況指数は、米長期金利と一定の相関性があるが、それがこの半年ほどかつてないほど大きく崩れている。ISM指数からすると、米長期金利は4%を上回っていてもおかしくないところ、4月以降は逆に大きく低下に向かい、一時は2.5%を割り込んだ。
こんなふうに、ISM指数と米長期金利のかい離がかつてないほどの拡大に向かったのが4月からという意味では、ユーロ危機深刻化のタイミングと重なる。ユーロ危機を一つのきっかけに、FRB(米連邦準備制度理事会)が4月にかけて模索していた出口政策は白紙化され、それどころか景気の「二番底」、デフレ化懸念が広がっていった。
夏以降ユーロ危機は一服となったものの、今度は米追加緩和観測に反応する形で、ISM指数が高止まりしているにもかかわらず、米金利低下傾向は続いた。3日の「雇用統計ショック」でも金利上昇となったのは、いよいよ景気指標から説明できないほどの金利下がり過ぎの修正が始まったということではないか。

◆目先的には異例の上がり過ぎ
それにしても、そんな米長期金利も急騰が続いた結果、さすがに目先的には上がり過ぎ懸念も強くなってきた。
米10年債利回りは8日に3.2%を大きく上回ってきた。これにより、90日移動平均線からのかい離率はプラス20%を超えてきた。このように同かい離率がプラス20%以上に拡大したのは、2000年以降では2003年8月と2009年6月など2回しかない。その意味では、異例の上がり過ぎになってきたということだろう。
ちなみに、2009年6月には、同かい離率はプラス30%まで拡大した。つまり今回より、長期金利の上がり過ぎが広がったこともあったわけだ。かりに今回も、同かい離率がプラス30%まで拡大するなら、3.5%程度まで長期金利は上昇する計算になるわけだ。それにしても、経験的には3.2-3.5%で米長期金利の上がり過ぎもいったん限界に達する見通しになる。
このような米長期金利の急上昇は、相関関係の強い米ドルの上昇ももたらしている。ただ米長期金利がいったん上がり過ぎの限界圏に入ってきたということは、ドルも高値波乱含みの展開になる可能性があるだろう。(了)

【参考リンク】
*注1.米10年債利回りの90日移動平均線からのかい離率
https://www.money-and-money.com/osa/overshootalert.asp?mht1=osa&mht2=L&mht3=3&CODE=USGG10#osatab

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2010.12.13 | FXレポート

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吉田 恒(よしだひさし)

プロフィール

吉田 恒(よしだひさし)

吉田 恒(よしだひさし)
1962年、青森県生まれ。1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社、2004年1月より同社の代表取締役社長就任。また、投資情報コングロマリット、 T&Cグループの持ち株会社であるT&Cホールディングス取締役にも2004年2月より就任。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。グローバル投資情報「G20マーケットインサイト」の編集責任者。また一般投資家向け為替リアルタイム市況「fx wave」の運営責任者、さらに一般投資家向けの為替および株式講演会を精力的に全国展開している。2000年からの米株バブル崩壊暴落、2002年の円急落、昨年2007年8月の円急騰など大相場予測の精度に定評がある。「わかりやすい、役に立つ、当たる」として顧客満足度の高さではFX界随一との呼び声が高い。

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