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金融市場の「ユーロ危機本位制」

㈱T&Cフィナンシャルリサーチ 代表取締役 吉田 恒

比較的順調に上昇してきた米株、米金利がともに頭打ちとなり、反落が加速し始めたのは11月下旬以降だ。ちょうど、アイルランドなど欧州の財政問題を受けたユーロ危機への懸念が再燃してきたタイミングと重なる。米株、米金利の運命もユーロ危機次第といった意味では、金融市場は「ユーロ危機本位制」の構図が続いているといえそうだ。

◆株、金利も翻弄する「ユーロ危機」
アイルランド問題をきっかけに、欧州財政懸念が再浮上したのは11月に入ってから比較的早い段階だった。これを受けて、いったんユーロは11月半ばにかけて1.35ドル割れまで急落した。しかしその後はすぐに1.37ドル程度まで戻すなど、この11月中旬頃までは欧州財政問題を受けたユーロ危機再燃も一進一退の状況となっていた。
しかし、11月下旬に入ってからユーロはあらためて急落。そのまま月末にかけて一時1.3ドル割れまでユーロ一段安となった。こういった中で、欧州財政問題を受けたユーロ危機第2幕への懸念が急拡大するところとなっていった。
そして、それまで堅調な地合いが続いていた米株、そしてむしろ急上昇となっていた米金利が、ともに頭打ちとなり、一転反落の勢いを強めたのもこの頃から。その意味では、米株も米金利も、ユーロ危機が重しになったといえそうだ。これから、米株、米金利が再上昇に向かうかは、ユーロ危機の推移次第で、「ユーロ危機本位制」の構図が続きそうだ。

◆ドル買いの「本物」と「偽物」
そんなユーロ危機の為替への影響はドル買いとドル売りの両面がある。発展性の期待できるのが「本物のドル買い」、そうではない暫定的な場合は「偽物のドル買い」といった言い方をすれば、ユーロ危機でのドル買いは後者で、ユーロ危機一服の後にこそ前者、「本物のドル買い」が期待できるだろう。
ユーロ危機は、その言葉通りユーロ安・ドル高の動きで、ドル買いが発生していることを示している。この場合のドル買いは、欧州のリスクプレミアム拡大により金融機関がドル不足に陥ったことによる影響も小さくない。ただこの欧州のリスクプレミアム拡大は、今年に入ってから欧州域内にとどまらず、米国も含めた世界的なリスク回避をもたらすことも多くなった。その結果の株安・金利低下はむしろドル売り要因だ。
11月下旬以降、ユーロ危機懸念が再燃し一気に1.3ドル割れへ、ユーロ安・ドル高となった局面でも、ドルは対円で85円を超えられなかった。これは、ユーロ安・ドル高となる中でも、米株が反落し、米金利上昇が足踏みしたことがドル買いの足を引っ張った面もあっただろう。
11月に入ってから、最初にドルをリードしたのは米金利の急上昇だった。それは、ユーロ危機が一服してこそ、むしろ再開されるだろう。ユーロ危機による「偽物のドル買い」から、ユーロ危機一服による「本物のドル買い」へ変われるか試される局面が続いている。(了)

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2010.12.09 | FXレポート

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吉田 恒(よしだひさし)

プロフィール

吉田 恒(よしだひさし)

吉田 恒(よしだひさし)
1962年、青森県生まれ。1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社、2004年1月より同社の代表取締役社長就任。また、投資情報コングロマリット、 T&Cグループの持ち株会社であるT&Cホールディングス取締役にも2004年2月より就任。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。グローバル投資情報「G20マーケットインサイト」の編集責任者。また一般投資家向け為替リアルタイム市況「fx wave」の運営責任者、さらに一般投資家向けの為替および株式講演会を精力的に全国展開している。2000年からの米株バブル崩壊暴落、2002年の円急落、昨年2007年8月の円急騰など大相場予測の精度に定評がある。「わかりやすい、役に立つ、当たる」として顧客満足度の高さではFX界随一との呼び声が高い。

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