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先進国と新興国を区別する米国


㈱T&Cフィナンシャルリサーチ 代表取締役 吉田 恒

IMF(国際通貨基金)がG20各国にあてた報告書の中で、経常黒字を抱える主要な新興国は自国通貨相場の上昇を真剣に容認し始める必要があるとの立場を示していたことが一部で報道されている。これは、IMFの言葉を借りる形で、米国がドル安容認において新興国と先進国を区別していることを感じさせるものだ。

◆対新興国通貨で「強すぎるドル」
また同じ報道の中で、IMFは円、ユーロ、英ポンドは経済のファンダメンタルズとおおむね一致しているとする一方で、米ドルはファンダメンタルズに対し強めとなっているとの認識を示していたとされている。この「米ドルはファンダメンタルズに対し強め」ということはどう理解したら良いだろうか。
たとえば、FRB(米連邦準備制度理事会)が試算している3つの実効相場で、先進国も新興国も含めた「ブロード・インデックス」は、まだ1995年の安値より小幅に「ドル高」となっている。その一方で、先進国通貨を対象とした「メジャー・インデックス」は、95年の安値より「ドル安」となっており、新興国通貨などを対象とした「OITPインデックス」は、95年より比較的大幅な「ドル高」になっている。
IMF報告書で示された「米ドルはファンダメンタルズに対し強め」という認識は、このような3つのドル実効相場の95年安値との比較からも導き出される。そうであれば、「米ドルはファンダメンタルズに対し強め」になっている理由は、新興国通貨に対してまだ大幅に「強いドル」になっているためで、すでに「弱いドル」になっている先進国通貨とは区別されていると考えることで、辻褄が合うのではないか。

◆「ユーロ過大評価」の意味とは?
また、IMFのエコノミストが、「ユーロは過大評価に近い水準にある」と発言したことが一部で報道された。1.42ドルを大きく越えるユーロ高は、「過大評価圏」ということではないか。
ユーロドルの適正水準、購買力平価は8月末現在で1.19ドル程度。経験的にみると、ユーロはこの購買力平価から2割以上割高になると「上がり過ぎ要注意」、そして3割以上の割高は「バブル」といえそうだ。購買力平価を2割上回った水準は1.42ドル、そして3割上回る水準は1.54ドルという計算になる。このようにみると、上述のIMFエコノミストの「ユーロは過大評価に近い」という見方とほぼ一致するといえるだろう。
最近のユーロ高は、米金利低下が続く中で、ユーロ圏は短期金利中心に上昇が続いているということがある。この背景には、もちろんドイツを中心に欧州の景気回復見通しが強くなっているということがあろう。ただし、上述のIMFエコノミストは、「これ以上のユーロ高は(ユーロ圏の)成長鈍化を意味する。ユーロ高がさらに進めば、影響はさらに大きくなる」と続けていたが、ユーロ高が景気回復見通しに水を差す可能性もあるだろう。(了)

【参考リンク】
*注1.米ドル実効相場の90日移動平均線からのかい離率
https://www.money-and-money.com/osa/overshootalert.asp?mht1=osa&mht2=L&mht3=2&CODE=CEERUS#osatab

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2010.11.01 | FXレポート

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吉田 恒(よしだひさし)

プロフィール

吉田 恒(よしだひさし)

吉田 恒(よしだひさし)
1962年、青森県生まれ。1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社、2004年1月より同社の代表取締役社長就任。また、投資情報コングロマリット、 T&Cグループの持ち株会社であるT&Cホールディングス取締役にも2004年2月より就任。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。グローバル投資情報「G20マーケットインサイト」の編集責任者。また一般投資家向け為替リアルタイム市況「fx wave」の運営責任者、さらに一般投資家向けの為替および株式講演会を精力的に全国展開している。2000年からの米株バブル崩壊暴落、2002年の円急落、昨年2007年8月の円急騰など大相場予測の精度に定評がある。「わかりやすい、役に立つ、当たる」として顧客満足度の高さではFX界随一との呼び声が高い。

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