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米国の為替政策の「真意」とは?

㈱T&Cフィナンシャルリサーチ 代表取締役 吉田 恒

米ガイトナー財務長官による「米国に通貨切り下げの意図はない」といった発言が報道されている。この意味は、先進国通貨である円やユーロに対するドル安を容認しないということ、そして新興国通貨の為替調整は必要だが、それも極端なものを求めているわけではなく、人民元は月平均1%程度の対米ドル上昇ペースで基本的には良いとの考えのようだ。

◆対先進国、新興国で大きく違うドル評価
米国が、先進国通貨に対してドル安を求めておらず、新興国通貨に対しては為替調整が不足していると考えていることは、決して新しい見解ではない。たとえば、米FRB(連邦準備制度理事会)が公表している米ドルの総合力を示す実効相場によると、先進国通貨を対象としたメジャーインデックスは、すでに史上最安値圏まで下落しているのに対して、新興国通貨も含めたブロードインデックスは、まだ最安値より高い水準にある。このように、先進国通貨に対しては十分為替調整されたが、新興国通貨に対しては不十分と考えているわけだ。
ただし、それをあえて今回ここまで明言しなかったのは、新興国通貨に対する為替調整圧力を進める上での意図的な判断があった可能性が考えられる。逆にいえば、ここに来てドル政策の内容を明言し始めたのは、そういった駆け引きが一段落しつつあるためではないか。
新興国通貨に対する為替調整期待の中でも、主役はもちろん中国人民元だろう。ただし、世界経済が不安定な中で、人民元に対しても一気に大幅な切り上げを期待しているわけでもなさそうだ。月平均1%程度の対米ドル上昇ペースで、まずは満足しているフシもある。

◆対新興国圧力の再開と強化
ドルの主要通貨に対する実効相場はすでに過去最安値圏まで下落している。一方で、主要通貨以外の通貨に対する実効相場は、まだ過去最安値を4割も上回った水準で推移している。このようにみると、主要通貨と新興国通貨では、為替調整に大きな差があることは明確だろう。
FRB(米連邦準備制度理事会)は、ドルの総合力を示す実効相場について、主要通貨を対象としたメジャーインデックス、そして主要通貨以外の通貨を対象としたOITPインデックス、この2つを全て合計したブロードインデックスといった3パターンで公表している。
それによると、メジャーインデックスは、すでに過去最安値圏まで下落している。対円でドルが過去最安値圏まで下落しているように、主要通貨に対するドル総合力で見てもドルは最安値圏まで下落。主要通貨に対してはある意味で十分過ぎるほどのドル安になっていることがわかる。
一方でOITPインデックスは、確認できる1995年以降の安値をまだ4割も上回った水準で推移している。それどころか、リーマン・ショックで「100年に一度の危機」が広がる前に記録した安値(2008年8月)すらまだ上回った水準での推移となっている。
このOITPインデックスの最高値は、2003年だった。この年の9月ドバイG7(7カ国財務相・中央銀行総裁会議)から、人民元高要求が強まり、新興国通貨に対してもドル下落が広がってきたが、それは「100年に一度の危機」で小休止した形となっていた。今回韓国G20で新興国への通貨高圧力が強まっているが、このようにみると2003年から始まり、「100年に一度の危機」で一休みしていた動きが本格的に再開したといった位置付けにもなりそうだ。
いずれにしても、こういった見方からすると、円やユーロなど主要通貨へのドル安は望まず、人民元など新興国通貨高を期待するというのが米国の本音といった見方で大きな誤解はなさそうだ。(了)

【参考リンク】
*注1.米ドル実効相場の90日移動平均線からのかい離率
https://www.money-and-money.com/osa/overshootalert.asp?mht1=osa&mht2=L&mht3=2&CODE=CEERUS#osatab

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2010.10.25 | FXレポート

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吉田 恒(よしだひさし)

プロフィール

吉田 恒(よしだひさし)

吉田 恒(よしだひさし)
1962年、青森県生まれ。1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社、2004年1月より同社の代表取締役社長就任。また、投資情報コングロマリット、 T&Cグループの持ち株会社であるT&Cホールディングス取締役にも2004年2月より就任。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。グローバル投資情報「G20マーケットインサイト」の編集責任者。また一般投資家向け為替リアルタイム市況「fx wave」の運営責任者、さらに一般投資家向けの為替および株式講演会を精力的に全国展開している。2000年からの米株バブル崩壊暴落、2002年の円急落、昨年2007年8月の円急騰など大相場予測の精度に定評がある。「わかりやすい、役に立つ、当たる」として顧客満足度の高さではFX界随一との呼び声が高い。

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