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米中間選挙、G20は転換点になるか

㈱T&Cフィナンシャルリサーチ 代表取締役 吉田 恒

ドル安、米金利低下が続く中で、これまでのところ米政府から特別なコメントは出ていない。ただし、米政府は重要な選挙を前後して、態度を「豹変」させたことが過去に何度かあっただけに、今回も11月中間選挙後の言動が変わる可能性に注目したい。

◆米国は選挙前後で豹変する
金融市場に対するコメントが、選挙を前後して「豹変」した例として、最も強い記憶に残っているのは1996年11月、当時のクリントン大統領再選が決まった大統領選挙だ。当時は、選挙前にドル高・株高が進んでいたが、選挙直後からそれらに対するコメントが「豹変」したのである。
最初の主役は「ミスター円」。前年にかけて展開した「超円高」といわれた為替の混乱を解決した日本の官僚として敬意を込めて「ミスター円」の称号で呼ばれたのは、その後財務官となった榊原英資氏だが、その榊原氏の一言がクリントン再選決定直後の為替相場を乱高下させた。
「円安誘導はやっていない」、「円高是正は終わりつつある」、超円高是正で脚光を浴び、「円安仕掛け人」のように思われていた当時の榊原氏によるそんなコメントが流れると、ドル円はわずか数十分で114円台から111円台へ3円もの円急騰、ドル急落となった。
そして「豹変」2人目の主役は、「米経済の守護神」とまで言われた当時のグリーンスパンFRB(米連邦準備制度理事会)議長だった。大統領選挙後も続伸していた米株に対して、株バブルを警告する「根拠なき熱狂なのか」といった名台詞が登場したのは、まさにこのタイミングだった。
ではなぜ、こんなふうに1996年大統領選挙前後で為替・株に対する見解は「豹変」したのか。そもそも選挙前から一方的な動きを懸念していたが、選挙前に株急落など金融市場の混乱は政権与党にとっては「百害あって一利なし」だから黙っていたに過ぎず、選挙勝利確定直後からすかさず懸念表明に動いたのではないか。
さて最近のドル安について、米国は積極的に歓迎しているのではないかとの見方も少なくない。14年前の円安に対する日本の立場に似ているような気もするが、そうであれば選挙後にけん制する可能性はないだろうか。また最近の米金利低下は行き過ぎ、「バブル」との見方もある。14年前の米株高に、選挙後「根拠なき熱狂か」とけん制したことが、今度は金利低下・債券高に対して飛び出す可能性はないだろうか。

◆韓国G20の「新プラザ合意」シナリオ
1985年のG5(5カ国財務相会議)プラザ合意とは、先進国間での為替調整として知られている。これに対して今回韓国で予定されているG20は、先進国通貨に対する中国を筆頭とした新興国通貨の為替調整、「新プラザ合意」の実現が注目されているといった構図もあるようだ。
プラザ合意は、米ドルに対する円や当時のマルク(ユーロの前身)といった非米ドル通貨の切り上げ合意だった。これに対して「新プラザ合意」は、米ドルなど先進国通貨に対する中国人民元など新興国通貨の切り上げが注目されているというわけだ。
こういった見方をすると、最近あったシンガポール・ドル切り上げを受けて、ドル安が一段と進んだのもわかりやすいかもしれない。これを受けて、ドル安・人民元高の可能性が高まったとの判断が広がった結果ではないか。
実際、この間じりじりと人民元の上昇が続いている。その意味では、着実に「新プラザ合意」成立へ近付きつつあるということかもしれない。日本時間19日にかけて、ガイトナー米財務長官が久しぶりに「強いドル」と発言し注目を集めた。こういったことも、合意に向けた駆け引きの終わりの始まりとなっている可能性を感じさせるものだ。 (了)

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2010.10.21 | FXレポート

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吉田 恒(よしだひさし)

プロフィール

吉田 恒(よしだひさし)

吉田 恒(よしだひさし)
1962年、青森県生まれ。1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社、2004年1月より同社の代表取締役社長就任。また、投資情報コングロマリット、 T&Cグループの持ち株会社であるT&Cホールディングス取締役にも2004年2月より就任。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。グローバル投資情報「G20マーケットインサイト」の編集責任者。また一般投資家向け為替リアルタイム市況「fx wave」の運営責任者、さらに一般投資家向けの為替および株式講演会を精力的に全国展開している。2000年からの米株バブル崩壊暴落、2002年の円急落、昨年2007年8月の円急騰など大相場予測の精度に定評がある。「わかりやすい、役に立つ、当たる」として顧客満足度の高さではFX界随一との呼び声が高い。

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