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日本の単独介入を可能にした「カラクリ」

㈱T&Cフィナンシャルリサーチ 代表取締役 吉田 恒

日本政府が為替介入に動いているが、日本としてはあくまでこれは円高阻止という「為替政策」ではなく、円売りに伴う資金供給拡大の「金融政策」と位置付けて、対外的に説明している可能性がある。そうであれば、円安誘導として円押し下げ介入に動く可能性は低く、たとえば86円を越えてくると、円売り・ドル買い介入に動く可能性もどんどん低くなるのではないか。

◆財務省が明かした米国が容認した理由
日本政府は、2003-2004年にかけてデフレの中での円高回避のために、空前の円売り介入に動いた。これについて、財務省の平成15年度の政策評価書では、「平成16 年4 月の米国財務省の為替報告においても、わが国の為替介入は為替操作(マニピュレーション)であるとは見られておらず、(中略)『介入による円資金の供給は、その不胎化が部分的にしかなされなかったために、重要なベースマネーの拡大の一要素となった』と記述しています」と説明されていた。
自国通貨安誘導という「為替操作」ではなく、円資金供給という「金融政策」だから、米国も理解し、容認したというわけだ。今回の介入も、外交関係の中では同じような不文律で扱われているのではないか。
ところで、円安誘導ではなく、あくまで円資金供給の「金融政策」といった「建て前」で行われた2003年の円売り介入は、さすがに円を押し下げに動くことには限界があったようだ。2003年の円売り介入は1月15日に初めて行われ、その水準は117円台と推定された。その後の円売り介入を調べてみると、120円の大台を越えて円売り・ドル買いに動いた形跡は基本的になかった。
仮に大台越えで介入すると、さすがに円安誘導ではないといった「弁明」が出来なくなるということだったのかもしれない。それとも2-3%以上の反発したドルを買い上げる(円を売り下げる)ことが「金融政策」の円売りと、「為替政策」の円売りの分かれ目だった可能性も考えられる。
今回の円売り・ドル買い介入は82円台後半で始まったと見られている。それから3%を大きく上回ってドルが反発した86円を大きく越えた水準で円売り・ドル買いに動くかは微妙だろうし、基本的には「金融政策」なら円押し下げ介入は難しそうだ。


◆円の「押し下げ」介入はできない
上述のように、2003年の介入について、財務省がホームページに開示した「政策評価」の中で説明した内容はさらに以下のように続いていた。
「また、IMF当局も、我が国の為替介入についてデフレを克服するため金融スタンスを適切、かつ十分に拡張的なものとするための方策の総合的なパッケージの一部としてとられた特例的な事態での特例的な措置と呼び得ると言っております」。
2003年の日本の為替介入額は20兆円と過去最大に達した。そんな「異常な介入」は、基本的に諸外国の通貨当局も「容認」する中で行われたわけだが、その「カラクリ」は、それを「金融政策」とみなすことで暗黙の了解があったということだろう。
さて、今回もデフレの中で行われている円売り介入については、早速「非不胎化」の扱いになっているようだ。この円売り介入が、円高阻止や円安誘導と言った為替政策ではなく、デフレ対策での円資金供給という「金融政策」として、諸外国も「黙認」することが合意されていることを示しているのではないか。(了)

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2010.09.21 | FXレポート

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吉田 恒(よしだひさし)

プロフィール

吉田 恒(よしだひさし)

吉田 恒(よしだひさし)
1962年、青森県生まれ。1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社、2004年1月より同社の代表取締役社長就任。また、投資情報コングロマリット、 T&Cグループの持ち株会社であるT&Cホールディングス取締役にも2004年2月より就任。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。グローバル投資情報「G20マーケットインサイト」の編集責任者。また一般投資家向け為替リアルタイム市況「fx wave」の運営責任者、さらに一般投資家向けの為替および株式講演会を精力的に全国展開している。2000年からの米株バブル崩壊暴落、2002年の円急落、昨年2007年8月の円急騰など大相場予測の精度に定評がある。「わかりやすい、役に立つ、当たる」として顧客満足度の高さではFX界随一との呼び声が高い。

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