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ドル円の鍵握る米金利下がり過ぎ修正

㈱T&Cフィナンシャルリサーチ 代表取締役 吉田 恒

ドル円の行方は、日銀の追加緩和など日本の円高阻止策より、米金利下がり過ぎ修正次第だと思っている。そしてそれは、基本的には始まりつつあるのではないか。

◆米金利急上昇の舞台裏
8月27日に米長期金利は一気に0.17%の急騰となった(注1)。ドルが対円でこの日85円台を回復してきたのも、基本的にはこのドル金利急騰に連れた面が大きかったと考えられる。ところで、問題はなぜ、この27日に米金利は急騰となったかということ。
日本の長期金利は、米長期金利より一日早い26日から急上昇が始まっていた(注2)。これは民主党の代表選に小沢一郎氏が出馬を決めたとの報道に反応したとの説明が多い。財政拡大懸念から、債券相場が反落し、利回りが急上昇したというわけだ。
ところで、この「小沢ショック」への懸念から売りに転じたとされる日本の投資家の一部は、この間国内債券だけでなく、外国債券も大量に買い増してきたと見られた。その主役は、邦銀と見られた。その邦銀は、9月中間決算が近付く中で、利益確定から債券売りに転じる可能性が考えられた。「小沢ショック」は、そんな邦銀の債券売りへの転換の一つのきっかけになったということではないか。
邦銀が債券買いをリードしたのは国内債だけでなく、外国債、米国債もそうだったとすると、一日遅れで米国債も急落、利回り急騰となったのは、邦銀の中間決算に向けた内外債券売りへの転換が始まったことを示しているのではないか。
債券は、一部に「バブル」といった見方もあるなど「買われ過ぎ」を警戒する見方もあった。相場が上がり続ける中で、便乗買いのようになった面もあるだろう。しかし相場が下落に転じると、それは逆転に向かう可能性がある。債券利回り、金利の動きは、為替を見る上でも一番の焦点ではないか。

◆HFは米債を買わない?!
次に、米国の投資家の動向を点検してみよう。CFTC(米商品先物取引委員会)統計によると、米10年債の投機筋のポジションは、8月初めの20万枚近い大幅なネット・ショート(売り持ち)が、8月下旬には2万枚を下回るまで急減した(注3)。これは、7月まで米債売りに動いていたヘッジファンドなどが、8月に入ってからその買い戻しを展開してきたことをうかがわせる。
ネット・ショート20万枚と言うのは、経験的に見てかなり大幅な売り越しだ。投機筋は、巨額の財政赤字を抱え、需給的に懸念のある米国債相場が上昇することに違和感を覚え、8月初めにかけて米債を売り上がったと考えられるが、米債相場は反落しなかった。そして8月初めに発表された米7月雇用統計が事前予想より悪い結果になると、一段の金利低下、債券価格上昇を覚悟し、米債の買い戻しに転じたということではないか。
ただ、8月下旬かけて、そんな投機筋のポジションも、ほぼニュートラルになってきた。ではここから、投機筋は米債買いのリスクをとって、ネット・ロング(買い持ち)拡大に動くだろうか。投機筋のポジションを見ると、2008年9月リーマン・ショックで「100年に一度の危機」が深刻化し、その対策のために米政府が未曾有の財政発動に向かったところから、需給懸念からか米債のネット・ロングを拡大する動きは見られなくなった。
そういった構図に変化がなければ、買い戻し一巡後は、ヘッジファンドなど投機筋から米債買いが入る可能性は低いのではないか。そうであれば、需給的には債券価格下落、利回り上昇の可能性が考えられるが、果たしてどうか。(了)

【参考リンク】
*注1.米10年債利回りの90日移動平均線からのかい離率
https://www.money-and-money.com/osa/overshootalert.asp?mht1=osa&mht2=L&mht3=3&CODE=USGG10#osatab
*注2.日本10年債利回りの90日移動平均線からのかい離率
https://www.money-and-money.com/osa/overshootalert.asp?mht1=osa&mht2=L&mht3=3&CODE=GJGB10#osatab
*注3.米10年債のポジション
https://www.money-and-money.com/osa/overshootalert.asp?mht1=osa&mht2=R&mht3=2&CODE=USD10Y&KCD=&chr=#osatab

2010.09.02 | FXレポート

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吉田 恒(よしだひさし)

プロフィール

吉田 恒(よしだひさし)

吉田 恒(よしだひさし)
1962年、青森県生まれ。1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社、2004年1月より同社の代表取締役社長就任。また、投資情報コングロマリット、 T&Cグループの持ち株会社であるT&Cホールディングス取締役にも2004年2月より就任。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。グローバル投資情報「G20マーケットインサイト」の編集責任者。また一般投資家向け為替リアルタイム市況「fx wave」の運営責任者、さらに一般投資家向けの為替および株式講演会を精力的に全国展開している。2000年からの米株バブル崩壊暴落、2002年の円急落、昨年2007年8月の円急騰など大相場予測の精度に定評がある。「わかりやすい、役に立つ、当たる」として顧客満足度の高さではFX界随一との呼び声が高い。

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