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「2つの顔」のユーロ安

㈱T&Cフィナンシャルリサーチ 代表取締役 吉田 恒

ユーロドル相場は、昨年12月の1.5ドルから最近にかけて1.2ドル割れとなるまでほぼ一本調子でユーロ安・ドル高が続いてきた。ただこのユーロ安は、4月までは景気回復を受けたリスク選好に伴う米金利上昇・ドル高の結果としてのユーロ安であり、その後はリスク回避で米金利低下、ドル高の結果としてのユーロ安といった具合に、ほとんど正反対の「2つの顔」となってきた。

◆4月以降「別の顔」になったユーロ安
米長期金利とユーロドル相場のグラフを重ねてみると、今年4月までは米金利上昇とドル高・ユーロ安が基本的に同じ方向で展開してきたことがわかる。4月G20財務相会議が共同声明の中で、「予想以上の景気回復」と述べたように、世界景気が順調に回復する中で、株高・金利上昇が広がり、それに沿う形でのドル高・ユーロ安になっていたわけだ。
ところが、そんな米長期金利上昇は、4月初めで頭打ちとなり、その後は最近にかけて米長期金利は低下傾向が広がってきた。これは、ユーロ危機を受けて、とくに5月以降は世界同時株安となり、リスク回避から安全資産とされる国債へ買いが集まったことが大きい。
そしてそんな下がる金利を尻目に、ドルは唯一の基軸通貨、決済通貨として「危機のドル買い」から上昇。この結果、4月を境に、金融市場を取り巻く環境は、リスク選好からリスク回避へ大きく転換したにもかかわらず、ドル高・ユーロ安は「別の顔」でそのまま続いた形になっているわけだ。リスク選好でもユーロ安、リスク回避でもユーロ安といった状況がいつまで続くかが試されているといえそうだ。

◆ハンガリーショックの違和感
ところで、そんなユーロ危機を懸念しユーロが急落する状況も、5月までのギリシャなどいわゆるPIIGSと呼ばれる南欧諸国の財政懸念への反応と、最近のハンガリーなど中東欧でもほとんど同じような反応になっているのは、ちょっと違和感がなくはない。
ギリシャへの懸念でユーロ急落となった一つのクライマックスは5月6日だろう。この日は、誤発注懸念も重なり米株急落となったこともあり、ユーロは対ドルで最大2.4%の急落を演じた。ところで、「第2のギリシャ」懸念発言から、ユーロ危機の主役がハンガリーに移ったようになったのが6月4日だった。この日は、米雇用統計への失望も重なり、やはりユーロは対米ドルで最大1.7%の急落となった。
このように、ギリシャ懸念でもハンガリー懸念でも、ユーロは一日で2%前後、対米ドルで急落となった。つまりユーロ下落の反応は良く似たものだが、しかし、ギリシャ問題とハンガリー問題では、専門家の評価は大きく異なっている。簡単に言うと、ギリシャ問題はユーロ急落になっても仕方ないほど厳しいとの評価であるものの、ハンガリー問題への評価は、ユーロ急落をもたらすものかといえばちょっと違うようだ。
たとえば、有力格付け機関は、「ギリシャの次はハンガリーではない」と語ったと報道されている。実際、2009年の財政赤字対GDP比率をみると、ギリシャのそれが13%にも上っているのに対し、ハンガリーは4%。このようにみると、ギリシャの財政懸念でユーロが急落するのはわからなくもないが、ハンガリーでも似たようなユーロ急落となるのはちょっと違和感があるのではないか。
かりに、「何でもユーロ売り」といった条件反射的な状況になっているなら、ユーロ危機への金融市場の反応も行き過ぎたものになっている可能性も考えられる。(了)

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2010.06.10 | FXレポート

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吉田 恒(よしだひさし)

プロフィール

吉田 恒(よしだひさし)

吉田 恒(よしだひさし)
1962年、青森県生まれ。1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社、2004年1月より同社の代表取締役社長就任。また、投資情報コングロマリット、 T&Cグループの持ち株会社であるT&Cホールディングス取締役にも2004年2月より就任。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。グローバル投資情報「G20マーケットインサイト」の編集責任者。また一般投資家向け為替リアルタイム市況「fx wave」の運営責任者、さらに一般投資家向けの為替および株式講演会を精力的に全国展開している。2000年からの米株バブル崩壊暴落、2002年の円急落、昨年2007年8月の円急騰など大相場予測の精度に定評がある。「わかりやすい、役に立つ、当たる」として顧客満足度の高さではFX界随一との呼び声が高い。

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