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ユーロ危機が左右する「天国と地獄」

㈱T&Cフィナンシャルリサーチ 代表取締役 吉田 恒

5月はユーロ危機が広がり、世界同時株安となって、リスク回避からクロス円は一時急落となった。ユーロ危機がこの6月も続くようなら、クロス円は引き続き要注意だろう。それともユーロ危機が小康に向かい、クロス円が反発に向かう可能性はあるのか。どちらのシナリオになるかを考えてみた。

世界同時株安は「セル・イン・メイ」だったのか?!

 米株、NYダウは5月に約1割の反落となった。5月に米株が反落となったのは、昨年も一昨年もそうだったが、昨年の場合は、反落は5月で一巡したのに対し、一昨年は6月以降も一段と反落が広がった。では、今年は昨年パターンになるか、それとも一昨年パターンになるだろうか。
 このように、5月の米株が反落になることが多かったのは、「セル・イン・メイ」の影響があるだろう。5月末は、ヘッジファンドなどが中間期末とすることが多いため、決算対策で利益の確定や損切りが入りやすく相場も下がりやすいという傾向があり、それを「セル・イン・メイ」と呼ぶ。
昨年の場合は、5月の米株反落は、名実ともに「セル・イン・メイ」だった。これに対して、一昨年は「セル・イン・メイ」にとどまらず、米株安は一段と6月以降広がっていった。さて、今年の5月米株反落は、ユーロ危機などの影響とされてきたが、しょせん「セル・イン・メイ」が大きく出たということに過ぎなかったのか、それとも「ユーロ危機」の影響はやはり過小評価できないものなのか。
 米株が昨年は「セル・イン・メイ」にとどまり、一昨年はそれを越えたひどいものになっていった一因として金融政策の影響もあっただろう。昨年は、まだ「100年に一度の危機」一服直後だったため、米国は超金融緩和を維持していた。一方一昨年は、7月にかけて原油価格が150ドル近くへ暴騰していく途上にあったことから、金融政策はいったん引き締め気味になっていた。
 では、今回の株価と金融政策の関係は、昨年と一昨年のどちらに似ているだろうか。ユーロ危機で世界同時株安となったこともあり、一時の早期利上げ期待は後退、超低金利継続の見通しになっているといった意味では、昨年に似ているのではないだろうか。そうであれば、今回も「セル・イン・メイ」にとどまる可能性はあるのではないか。

ユーロ危機が招いた「いびつな現象」

 5月に入り、「ユーロ危機」が深刻化し、世界同時株安となる中で、いくつか「いびつな現象」も起こっている。その一つが金利の下がり過ぎ。
 「ユーロ危機」が深刻化する以前、4月まで、世界景気は「100年に一度の危機」からの回復が「予想以上」になってきたとの見方が広がっていた。そういった中で、米長期金利は4月初めに4%まで上昇した。ところが、「ユーロ危機」で世界同時株安となる中で、5月後半には一時3.1%まで米長期金利は急低下となった。米長期金利は4%と3.1%のどちらがファンダメンタルズ的には正しいのか。普通は前者ということになるだろう。
 米長期金利は、米企業の景況感を示す代表的な指標、ISM(米供給管理協会)製造業指数などと一定の相関関係がある。そのISM指数は、この数カ月60ポイントまで大幅上昇となった。このISM指数の60ポイントがいかに凄いかといえば、これは2004年夏以来の高水準だからだ。
 要するに、「100年に一度の危機」と言っていた頃からまだ1年程度しか経過していないのに、米企業の景況感は、何と6年ぶりの水準まで改善していたわけだ。そしてそんなISM指数は、上述の通り、米長期金利と相関関係にある。では、ISM指数が60ポイントにあった2004年夏の米長期金利はいくらだったかといえば、4.5%前後だった。
 このようにみると、4月にかけての米長期金利の4%への上昇は、ファンダメンタルズ的にとくにおかしいものではなかっただろう。そんな予想以上の景気回復下でも、3%割れ近くまでの米長期金利急低下をもたらしたのは、「ユーロ危機」による世界同時株安でのリスク回避、安全資産の米国債買いだった。
 「ユーロ危機」は、世界経済の予想以上の回復の腰を折るほどのインパクトをもたらしているのだろうか。そうでなければ、「ユーロ危機」によってファンダメンタルズからかい離して金利が下がり過ぎとなった動きが、「ユーロ危機」一服となるようなら修正に向かうことになるだろう。
 ISM指数との関係からすると、米長期金利は4-4.5%程度になる。米長期金利の下がり過ぎ修正で、そういった水準まで一気に米長期金利が上昇に向かうなら、「ユーロ危機」から一転米国債の暴落、利回り急騰といった「米国債危機」ムードが広がりかねない。(了)

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2010.06.07 | FXレポート

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吉田 恒(よしだひさし)

プロフィール

吉田 恒(よしだひさし)

吉田 恒(よしだひさし)
1962年、青森県生まれ。1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社、2004年1月より同社の代表取締役社長就任。また、投資情報コングロマリット、 T&Cグループの持ち株会社であるT&Cホールディングス取締役にも2004年2月より就任。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。グローバル投資情報「G20マーケットインサイト」の編集責任者。また一般投資家向け為替リアルタイム市況「fx wave」の運営責任者、さらに一般投資家向けの為替および株式講演会を精力的に全国展開している。2000年からの米株バブル崩壊暴落、2002年の円急落、昨年2007年8月の円急騰など大相場予測の精度に定評がある。「わかりやすい、役に立つ、当たる」として顧客満足度の高さではFX界随一との呼び声が高い。

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