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行き過ぎ感が拡大するユーロ

㈱T&Cフィナンシャルリサーチ 代表取締役 吉田 恒

ギリシャをきっかけとしたユーロの混乱がなかなか落ち着かない。ユーロ安については水準的には懸念されるものではないが、スピード的には短期的にも中長期的にも行き過ぎ懸念が強いものになっている。ユーロの混乱から、世界的なリスク回避ムードが広がり、これまで好調だった資源国通貨にも反落リスクが拡大してきた。米ドルを除く外貨全般に下落リスクが広がる中で、円は円高バイアスが強まりやすくなっている。

必ずしも「悪いユーロ安」ではない

 ユーロはこの半年間で、130円を大きく上回り、対米ドルでも1.5ドルを上回っていた水準から110円、1.2ドル割れ近くまで下落してきた。ただこれほどの大幅なユーロ安でも、じつは必ずしも「悪いユーロ安」ではなさそうだ。
 「悪いユーロ安」とは、経済への悪影響が懸念されるユーロ安と判断された結果、政策当局が阻止・是正に動くといった意味で定義すると、それは1999年に誕生したユーロの歴史の中でたった一度あったもの。2000年9月に、G7(7カ国財務相会議)、日米欧の先進国はユーロ買い支えで協調介入に出動した。ある意味で、ユーロ防衛介入だったわけだから、G7が「悪いユーロ安」と判断した結果だったといえるだろう。
 では、そんな「悪いユーロ安」とはどういったものだったか。この2000年9月の「悪いユーロ安」は、適正水準である購買力平価を、対円、対米ドルともに2-3割も下回っていた。このように、「悪いユーロ安」とは、適正水準を2-3割下回ったものだとすると、最近のユーロ安はまだ「悪い」とはいえないだろう。適正水準である購買力平価は、4月末現在でユーロ円は115円、ユーロドルは1.22ドル程度だ。
 つまり、購買力平価から見ると、この半年間のユーロ安は、むしろ適正より割高だったユーロが修正されてきた動きであり、ここに来てようやくユーロは適正水準まで修正されてきたといえそうだ。
その上で、「悪いユーロ安」が適正水準を2割以上も大きく下回ったものということなら、ユーロ円は100円割れ、ユーロドルは1ドル割れといった計算になる。こんなふうに見てくると、半年続くユーロ安だが、必ずしも経済に悪影響になる「悪いユーロ安」ではなく、まだまだ普通ならユーロ買い介入警戒感は低いといえそうだ。

短中長期的に「下がり過ぎ」懸念強まるユーロ

 ただ、ユーロ下落がいつも「悪いユーロ安」になって、政策当局の防衛介入があるまで止まらないかといえば、決してそうではない。最もわかりやすいのが、「100年に一度の危機」の中で、2009年初めにかけて展開したユーロ下落だが、あれはECB(欧州中銀)などの介入がなくても、「自然に」止まった。
 では、なぜ「100年に一度の危機」におけるユーロ下落は終わったのか。一つには、「下がり過ぎ」の限界に達したということがあっただろう。ユーロ円の中長期の行き過ぎをチェックするのは5年移動平均線からのかい離率が便利だ。同かい離率は、経験的に±20%が行き過ぎの転換点だが、2009年1月のユーロ底打ちも、まさに同かい離率がマイナス20%前後に達したところで起こった。
 ちなみに、4月末現在の5年線は144.7円程度。このため、それを20%下回った水準は115円程度という計算になる。「5・6パニック」でユーロ円は一気に110円まで急落したが、すでにかなり中長期下がり過ぎ警戒圏までユーロは下落しているといえそうだ。
 次に、短期の相場の行き過ぎを点検してみよう。これについては、私は90日移動平均線からのかい離率を基本的に使う。同かい離率の±10%が、経験的には短期上がり過ぎ、下がり過ぎの転換点になる。
90日線は、17日現在でユーロ円が123.8円、ユーロドルは1.35ドル程度。このためそれを10%下回った水準は111円台、1.21ドル台になる。ユーロは5月に入ってから110円、1.2ドルといった大台割れ含みの動きになったが、このように見るとそれはかなり短期的にも下がり過ぎが警戒される動きになっていたといえそうだ。 (了)

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2010.05.24 | FXレポート

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吉田 恒(よしだひさし)

プロフィール

吉田 恒(よしだひさし)

吉田 恒(よしだひさし)
1962年、青森県生まれ。1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社、2004年1月より同社の代表取締役社長就任。また、投資情報コングロマリット、 T&Cグループの持ち株会社であるT&Cホールディングス取締役にも2004年2月より就任。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。グローバル投資情報「G20マーケットインサイト」の編集責任者。また一般投資家向け為替リアルタイム市況「fx wave」の運営責任者、さらに一般投資家向けの為替および株式講演会を精力的に全国展開している。2000年からの米株バブル崩壊暴落、2002年の円急落、昨年2007年8月の円急騰など大相場予測の精度に定評がある。「わかりやすい、役に立つ、当たる」として顧客満足度の高さではFX界随一との呼び声が高い。

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