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景気不安、追加緩和の「再現ドラマ」はない?

㈱T&Cフィナンシャルリサーチ・吉田 恒

3日発表された米5月雇用統計は、事前予想よりもかなり悪い結果となりました。それでなくとも、このところ米景気指標の悪化が続き、米景気に対して悲観論が強まっていただけに、今回の結果はそれにとどめを刺すような感じになっています。ちょうど一年前も、夏にかけて景気不安が拡大、追加緩和期待が強まり、FRB(米連邦準備制度理事会)は昨年11月には第二次量的緩和、QE2に踏み切るところとなりました。今回の雇用統計を受けて、そんな昨年の「再現ドラマ」に向かうとの見方がいよいよ強くなってきたようです。つまり、FRBは現在のQE2を今月末で終了する予定でいますが、あらためて第三次量的緩和、QE3を余儀なくされるといった見方です。

◆引き締めなき景気失速は起こらない
ただ私は、このような昨年の「再現ドラマ」シナリオに対してまだ少し「ひっかかり」があります。それは、簡単な言い方をすると、FRBが金融引き締めに転換したわけでもない中で、景気が減速に向かい、景気不安が拡大するということが本当にあるのか懐疑的だということです。
FRBは6月末でQE2を終了するとは言っていますが、引き締めへの転換には慎重姿勢を続けています。にもかかわらず、景気回復が腰折れとなり、先行き不安が拡大するということが本当にあるのでしょうか。
ただ、そんなことを言ったら昨年もFRBが引き締めに転換したわけではなかったのに夏にかけて景気不安が広がったではないかといった反論はあるでしょう。ただ、昨年の夏にかけての景気不安拡大をもたらしたのは、FRBの金融政策以上にユーロ危機など米国以外の要因が大きかったのではないでしょうか。
その意味では、最近もギリシャなど欧州の財政懸念はくすぶっているし、春にかけて中東・アフリカの混乱を受けた原油価格高騰、そして東日本大震災など米国以外の要因が、米景気の足を引っ張る構図は同じともとれなくはありません。ただ、こんな指標をみると、昨年と今年はやはり大きく違っているのではないでしょうか。
「資料」は金融市場の不安心理を示すとして「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数です。これを見ると、昨年6月にかけて金融市場の不安感が急拡大していたことがわかるでしょう。それをもたらしたのは、もちろんユーロ危機です。
こんなふうに見ると、昨年6月にかけてのユーロ危機は、欧州だけの問題ではなく、世界の金融市場を委縮させ、リスク回避で株価急落をもたらしたことで、米景気回復の腰を折る悪影響をもたらしたということだったのでしょう。
さて、そんなVIX指数は、今年3月に日本の大震災の影響などから一時上昇する場面がありましたが、それも含めて最近にかけての推移は、昨年6月にかけての動きとは比べ物にならないほど落ち着いたものです。
これを見る限り、今年に入ってからの中東・アフリカ混乱や、それに伴う原油価格の高騰、そして東日本大震災、欧州ソブリン・リスクなどは、それぞれは重大で深刻な問題なのですが、ただし昨年のユーロ危機ほど世界の金融市場を委縮させる要因とまではなっていなかったようです。
こんなふうに、FRBが金融引き締めへ転換したわけでもなく、昨年のユーロ危機のように、米国以外の要因が異例の悪影響をもたらしているわけでもなさそうです。
にもかかわらず、自然に米景気回復が腰折れとなり、景気不安の拡大、追加緩和期待を受けたQE3に追い込まれるといった昨年の「再現ドラマ」に向かうということが本当にあるのでしょうか。(了)

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2011.06.09 | FXレポート

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吉田 恒(よしだひさし)

プロフィール

吉田 恒(よしだひさし)

吉田 恒(よしだひさし)
1962年、青森県生まれ。1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社、2004年1月より同社の代表取締役社長就任。また、投資情報コングロマリット、 T&Cグループの持ち株会社であるT&Cホールディングス取締役にも2004年2月より就任。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。グローバル投資情報「G20マーケットインサイト」の編集責任者。また一般投資家向け為替リアルタイム市況「fx wave」の運営責任者、さらに一般投資家向けの為替および株式講演会を精力的に全国展開している。2000年からの米株バブル崩壊暴落、2002年の円急落、昨年2007年8月の円急騰など大相場予測の精度に定評がある。「わかりやすい、役に立つ、当たる」として顧客満足度の高さではFX界随一との呼び声が高い。

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