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ユーロが売られる「本当の理由」

㈱T&Cフィナンシャルリサーチ・吉田 恒

昨年一時1.2ドル割れまで売り込まれ、「ユーロ危機」とされたことが完全に忘れ去られたような展開が続いていたユーロでしたが、5月に入ってからは一段安になっています。その原因を考えたいと思います。

◆始まりは利上げ見送り
ところで、この5月、ユーロ安が始まったきっかけを覚えていますか。1.5ドル突破寸前のユーロ高を反転させるきっかけになったのはECB(欧州中銀)の6月利上げ見送り観測でした。ECBは4月に利上げを行いましたが、追加利上げを6月にも行うとの期待が一部あったところ、それがどうやら裏切られそうだとして、金利低下、ユーロ売りとなったわけです。
そして、その後もユーロは売られ、最近は1.4ドルの大台割れが迫ってきました。では、ECB追加利上げ期待後退を受けた金利低下はまだ続いているかといえば、それは違うようです。ECB利上げを織り込む独1年債利回りは、確かに5月初めには急低下となりましたが、最近は「ECBショック」前の水準にほぼ戻ってきました。
これを見る限り、市場ではECBは6月には利上げをやらないが、でもそのまま当面利上げをやらないわけではなく、7月にも利上げに踏み切るといった見方のようです。つまり早期利上げ期待は大きく変わっていないのに、ユーロが4月までのように、それに買いで反応しなくなっているということでしょう。

◆信用悪化も再燃せず
ではなぜ、ECB早期利上げ期待でもユーロ買いにならなくなったのでしょうか。ギリシャのユーロ圏脱退思惑や、債務再編思惑などが浮上、いわゆる欧州ソブリン・リスクが再燃したからといった理解が一般的なのでしょうか。
この欧州財政不安、ソブリン・リスクは、昨年ユーロを急落させ、「ユーロ危機」を引き起こしました。その中で、欧州への信用は急悪化したのです。ところが、じつは最近の場合、この信用悪化は目立った動きにはなっていないようなのです。
「資料」は、欧州に対する信用リスクを示す代表的な指標である欧州CDS指数ですが、それはこの5月も目立った変化はありません。その意味では、5月に入ってからの欧州財政不安再燃でも、欧州への信用が急悪化しているわけではないようなのです。
しかし、実際問題としてユーロは5月初めの1.5ドル程度から最近は1.4ドル割れ近くまで一段安となっています。これまで見てきたように早期利上げ期待が消えて金利が下がりっ放しになっているわけでもなく、財政不安再燃で信用悪化が再燃しているわけでもないのにユーロが売られたままになっているのは、一つにはやはり原油安の影響でしょう。
ユーロと原油は相関性が高く、基本的に同じ方向に動く傾向があることがわかります。そんな同じ方向に動く原油が、日本のGWを前後し急落に転じました。だからユーロも売られやすくなっているということだと思います。(了)


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2011.05.16 | FXレポート

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吉田 恒(よしだひさし)

プロフィール

吉田 恒(よしだひさし)

吉田 恒(よしだひさし)
1962年、青森県生まれ。1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社、2004年1月より同社の代表取締役社長就任。また、投資情報コングロマリット、 T&Cグループの持ち株会社であるT&Cホールディングス取締役にも2004年2月より就任。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。グローバル投資情報「G20マーケットインサイト」の編集責任者。また一般投資家向け為替リアルタイム市況「fx wave」の運営責任者、さらに一般投資家向けの為替および株式講演会を精力的に全国展開している。2000年からの米株バブル崩壊暴落、2002年の円急落、昨年2007年8月の円急騰など大相場予測の精度に定評がある。「わかりやすい、役に立つ、当たる」として顧客満足度の高さではFX界随一との呼び声が高い。

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