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原油高「行き過ぎ」の可能性を考える

㈱T&Cフィナンシャルリサーチ・吉田 恒

世界一の産油地域、中東・北アフリカの混乱から、供給不安による原油高騰となっている。ただ原油価格のトレンドは、供給より需要との因果関係が強い。これまでの原油高はともかく、世界景気といった需要の観点から原油価格のさらなる一段高はちょっと無理があるのではないか。

◆供給不安による原油高の限界
原油価格は、2007年頃までは米鉱工業生産など米景気でほぼ説明できるものだった。ところが、2008年7月にかけて、米景気が減速する中でもNY原油、WTIが150ドル近くまで急騰したケースは、米景気で説明できる範囲をはるかに超える原油高だった。
こういった中で登場したのが「デカップリング論」だった。世界景気は米景気が減速しても、中国など新興国がリードしているため原油高もおかしくはないといった意味だ。しかしその後原油価格は、150ドル手前から30ドル台へ暴落。150ドル近くまでの原油高は、さすがに「バブル」だった可能性が再確認された。
では、「デカップリング論」も間違いだったのか。たとえば、2007年までの原油価格と米鉱工業生産の相関関係からすると、原油価格は20ドル台まで下落してもおかしくなかったところが、そこまでの原油安は回避された。その後も、最近に至るまで、原油価格は、米鉱工業生産で説明できる水準より30ドル程度上回った水準での推移が続いている。これが「デカップリング」分なのかもしれない。
いずれにしても、90ドル程度までの原油価格上昇は、米鉱工業生産の急回復でほぼ説明可能な動きだった。ただ100ドルを越えるとなるとちょっと微妙だ。原油価格に対する供給要因は一時的で、トレンドを説明できるのは需要要因だ。世界景気という需要要因からすると、100ドルを大きく越える「第3次石油ショック」の原油価格高騰は、一方で「バブル」の可能性もありそうだ。

◆空前規模に拡大する投機原油買い
ヘッジファンドなどの取引を反映しているCFTC(米商品先物取引委員会)統計によると、WTIのポジションは、2月22日現在で買い越しがついに20万枚を突破した。昨年11月以降、初めて買い越しが15万枚を越えてきたが、さらに20万枚を越えるというのはまさに空前の買い越しだ。別な見方をすると、「買われ過ぎ」の可能性も要注意ということではないか。
ちなみに、こういったWTI買い越し拡大は、3-4月に一巡し、縮小に転じることがこれまで多かった。これはやはり冬場の需要期が終わり、不需要期に移ることの影響があるだろう。
このところのWTIの空前の買い越し拡大には、世界的なインフレ懸念の高まりとともに、最近の中東・アフリカといった産油地域での混乱を受けた石油の供給不安の影響がある。イラン革命を受けた1979年の第2次オイルショックに続く、「第3次オイルショック」の懸念も囁かれているものだけに予断は許せないが、そういった局面だからこそマーケットが行き過ぎた動きとなり、自律的に反転に向かう可能性もなくはないだろう。(了)

【参考リンク】
*注1.WTIのポジション
https://www.money-and-money.com/osa/overshootalert.asp?mht1=osa&mht2=R&mht3=2&CODE=WTI#osatab

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2011.03.03 | FXレポート

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吉田 恒(よしだひさし)

プロフィール

吉田 恒(よしだひさし)

吉田 恒(よしだひさし)
1962年、青森県生まれ。1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社、2004年1月より同社の代表取締役社長就任。また、投資情報コングロマリット、 T&Cグループの持ち株会社であるT&Cホールディングス取締役にも2004年2月より就任。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。グローバル投資情報「G20マーケットインサイト」の編集責任者。また一般投資家向け為替リアルタイム市況「fx wave」の運営責任者、さらに一般投資家向けの為替および株式講演会を精力的に全国展開している。2000年からの米株バブル崩壊暴落、2002年の円急落、昨年2007年8月の円急騰など大相場予測の精度に定評がある。「わかりやすい、役に立つ、当たる」として顧客満足度の高さではFX界随一との呼び声が高い。

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