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夏への景気悲観論、今年は違う?

㈱T&Cフィナンシャルリサーチ・吉田 恒

昨年夏にかけて米株は一段安に向かった。これはユーロ安と強く連動したといった意味で「ユーロ本位制」での株安だった。今年も5月に入ってユーロ安・株安となっている。ただ今年の米株はむしろ「原油本位制」の構図。その原油価格が反落しているという意味では、株安にも限界があるだろう。

◆ユーロ本位制と原油本位制
昨年の米株、NYダウは7月にかけて一段安へ向かった。これは6月にかけて深刻化した「ユーロ危機」と非常に高い相関性があった。その意味では、昨年7月にかけて米株を急落させた「犯人」はユーロ危機だったといえるだろう。
ところで、今年に入ってからの米株は、昨年夏ほどユーロとの相関性は高くない。むしろ今年に入って一時米株に強く影響するようになったのは原油価格だった。その意味では、米株は昨年夏の「ユーロ本位制」から、今年に入ってからは「原油本位制」の構図に変わったともいえるだろう。
「ユーロ危機」は昨年の金融市場における主役だった。そしてそんな「ユーロ危機」ほどではないかもしれないが、一時100ドルの大台を大きく超えて上昇した原油価格は、今年これまでのところの金融市場の主役だった。「主役」の動きが米株にも強く影響したのは当然だろう。
さて、昨年夏にかけて米株が一段安へ向かう中で、米景気の「二番底」懸念が広がったが、このように見てくるとそれは「ユーロ危機」の影響も大きかったということだろう。今年も、5月に入ってからユーロ一段安の中で米株は反落となっている。一年前の再現のようで不気味ではあるが、金融市場の主役といった立場にユーロが復帰しているかはちょっと微妙だ。
むしろこれまで見てきたように、今年の金融市場の「主役」が原油価格といった構図で考えると、その原油価格が5月に入って反落に転じていることは米株にとってもプラス材料のはず。金融市場が「原油本位制」から、一年前の「ユーロ本位制」に戻ったということでないかぎり、米株が昨年夏のように一段安へ向かうことにはならないと考えられるが、果たしてどうか?

◆米金利低下はクライマックス?!
ところで、米長期金利の90日移動平均線からのかい離率は26日、マイナス10%程度に拡大してきた。経験的に、同かい離率がマイナス10%を越えることは少ない。その意味では、米長期金利はそろそろ短期的に下がり過ぎ懸念が強くなってきたといえそうだ。
米長期金利は、過去10年間でじつに8回、5月末ないし6月中に年間の天井ないし安値をつけていた。つまり6月にかけて、米長期金利には重要な基調転換が起こりやすいといったアノマリーがある。その意味では下がり過ぎが限界に達し、米金利が底打ち、反転となるタイミングが近い可能性はある。
ただ、昨年も6月にかけて米長期金利は90日線からのかい離率がマイナス10%以上に拡大、短期下がり過ぎが広がったが、それは6月に一巡せず、8月にかけて同かい離率はマイナス20%へ一段と拡大した。これは、米景気の「二番底」懸念が広がったことが主因だった。
昨年の二の舞で、夏にかけて米景気減速懸念が広がるようなら、アノマリーと異なり、今回米金利は夏にかけて底割れに向かう可能性が出てくる。ただ、昨年の教訓をもとに、この間FRB(米連邦準備制度理事会)は緩和政策転換に慎重な運営を続けており、その意味では昨年の二の舞は回避される可能性も十分あるだろう。そうであれば、アノマリー通り、米金利低下は近くクライマックスになる。(了)

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2011.05.30 | FXレポート

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吉田 恒(よしだひさし)

プロフィール

吉田 恒(よしだひさし)
1962年、青森県生まれ。1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社、2004年1月より同社の代表取締役社長就任。また、投資情報コングロマリット、 T&Cグループの持ち株会社であるT&Cホールディングス取締役にも2004年2月より就任。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。グローバル投資情報「G20マーケットインサイト」の編集責任者。また一般投資家向け為替リアルタイム市況「fx wave」の運営責任者、さらに一般投資家向けの為替および株式講演会を精力的に全国展開している。2000年からの米株バブル崩壊暴落、2002年の円急落、昨年2007年8月の円急騰など大相場予測の精度に定評がある。「わかりやすい、役に立つ、当たる」として顧客満足度の高さではFX界随一との呼び声が高い。

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