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試されるユーロ発金融混乱の転換

㈱T&Cフィナンシャルリサーチ 代表取締役 吉田 恒

中国が人民元の弾力化、実質切り上げを決めた。前回、人民元を最初に切り上げたのは2005年7月だったが、その直前に中国の株価は底を打ち、切り上げから一カ月で15%以上の大幅上昇に向かった。さて、今回の場合も、人民元切り上げは株安から株高への転換を再確認するものなのか。

人民元切り上げはユーロ高、株高、金利上昇の示唆

人民元の弾力化は、G20といった重要な国際会議の予定が迫ったため、外圧を警戒して中国が譲歩した決断なのだろうか。
 しかし、そもそも4月にも実施される可能性があると見られた人民元の政策変更が、簡単にはやれないかもしれないといった見方に変わったのは、ユーロ危機が深刻化し、世界同時株安となって、場合によっては「100年に一度の危機」が第2幕を迎えているかもしれないとの不安が広がったことが大きかっただろう。
 いくら、外圧を警戒したとしても、「危機」第2幕かもしれない不安が残る中では、妥協などできないのではないか。ということは、人民元の政策変更をしても大丈夫と判断できるように、「危機」第2幕の不安がなくなったとの見極めがあったのではないか。
 また、人民元の切り上げと言うのは、金融引き締め策だ。今年に入って、中国は1、2、5月の3回、預金準備率引き上げといった引き締め策を決定したが、この決定直後の中国の株価(上海総合指数)は反落した。これに対して、今回は、上海株は上昇となった。引き締め策を実施しても株高になるというのは、そもそも「危機」2幕の不安は峠を越えたと言うことではないか。
 私は、「危機」2幕に否定的な見方をとってきた。5月から本格化した世界同時株安も、「セル・イン・メイ」が行き過ぎになった動きに過ぎない可能性があると考え、そうであるなら、6月以降株高になると思ってきた。
 また、世界同時株安でリスク回避から安全資産とされる米国債買いが強まり、3%割れ近くまで急低下した米長期金利についても、「間違い」ではないかと考えてきた。そして、米長期金利には、6月に年間の天井ないし底値をつけるアノマリーがあることから、そんな「間違った」金利低下も、この6月に転換する可能性があると考えてきた。

ドル円の行方を決める鍵とは?

では、為替はどうか。「危機」第2幕の不安が広がるきっかけになったのはユーロ危機だった。ギリシャなど欧州の一部国々の財政問題は深刻で、それは簡単に解決するものではないだろう。
 ただ、だからといってユーロがこの問題が解決するまで一貫して売られるかといえば、それはどうだろう。ユーロはまだ「悪いユーロ安」ではないが、しかし空前の売られ過ぎで、そして短期的にも中長期的にも下がり過ぎの限界、つまり「スピード違反」が懸念される状況になっていた。
 さて、私は相場の行き過ぎを察知し、予測に活かす方法をオーバーシュート・アラート(OSA)と呼んでいるが、その中で短期の行き過ぎを90日移動平均線からのかい離率で点検している。
それからすると、下がり過ぎの修正は、「振り子の法則」により、最低でも90日線を回復するのが基本。21日現在のユーロの90日線は、1.3ドル、120円程度だから、行き過ぎたユーロ安の修正はそこまで続く可能性がありそうだ。
最後にドル円について考えてみよう。米金利が上昇に向かうなら、ドル高・円安になるだろうか。それとも、ユーロ高・ドル安が1.3ドルに向かうため、ドル円もドル安・円高になるのか。
この鍵を握るのは、「ユーロ危機の次は米国債危機なのか」となるかだと思う。上述のように、米金利が4%に向かい、ドル安が1.3ドルに向かうなら、米債券とドルの同時安になりかねない。そもそも、未曾有の財政赤字拡大になっている点では米国の財政問題も深刻といった議論になりやすい面があるだろう。
そして、中国が人民元高を容認し、ドル買い介入が減ると、最大の米国債買い手である中国からの米国債購入が減るとの思惑も出やすい。しかも、米金利が「間違い」なら、その修正で金利上昇、債券価格下落リスクには過敏になりやすいだろう。(了)

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2010.06.28 | FXレポート

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吉田 恒(よしだひさし)

プロフィール

吉田 恒(よしだひさし)

吉田 恒(よしだひさし)
1962年、青森県生まれ。1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社、2004年1月より同社の代表取締役社長就任。また、投資情報コングロマリット、 T&Cグループの持ち株会社であるT&Cホールディングス取締役にも2004年2月より就任。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。グローバル投資情報「G20マーケットインサイト」の編集責任者。また一般投資家向け為替リアルタイム市況「fx wave」の運営責任者、さらに一般投資家向けの為替および株式講演会を精力的に全国展開している。2000年からの米株バブル崩壊暴落、2002年の円急落、昨年2007年8月の円急騰など大相場予測の精度に定評がある。「わかりやすい、役に立つ、当たる」として顧客満足度の高さではFX界随一との呼び声が高い。

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