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「100年に一度の危機」再来の岐路

㈱T&Cフィナンシャルリサーチ 代表取締役 吉田 恒

ギリシャをきっかけとしたユーロ危機が、世界的な金融市場不安のようになってきた。米経済が比較的好調な中で、海外の混乱に巻き込まれた例はこれまでもなかったわけではないが、今回もそうなり、「100年に一度の危機」再来となってしまうのか。それともこれは、「セル・イン・メイ」、そもそも5月はポジション手仕舞いが広がりやすいところに、それが加速したに過ぎないのか。そうであれば、6月にかけて金融市場はセリング・クライマックスに向かうことになるが、果たして?

クロス円の運命を左右する「危機」再来

 米経済は、雇用情勢にも改善の兆しが明確になるなど、好調な状況が続いている。ところが、米株、NYダウも4月末の高値から10%以上の反落となった。ギリシャの財政懸念から始まった欧州の混乱、ユーロ危機が米国も巻き込み、世界的な金融市場不安の様相となってきた。
 このように、米国内の経済情勢は好調なのに、海外の混乱に巻き込まれて、米国でも金融不安が深刻化した例はかつてないわけではない。1997年アジア通貨危機から始まり、1998年ロシア・ルーブル・ショックといった動きを経て、NYダウは98年夏の高値から秋にかけて2割の急落となり、FRB(米連邦準備制度理事会)は、3カ月連続の利下げを余儀なくされたことがあった。
 この1998年、海外の金融不安を米国内に「伝染」させる直接的な役割を果たしたのは巨額の投資損失だった。大手ヘッジファンド、LTCMの巨額損失懸念、それを受けて金融不安が強まり、株価が2割も急落すると、株安の逆資産効果への懸念などからFRBも利下げを余儀なくされたわけだ。
 5月に入り、NYダウは下げ足を強め、一時1万ドルの大台割れ、4月のピークからの反落率は1割を超えてきた。これは、ユーロ危機が「伝染」し、金融混乱が世界的なものとなり、「100年に一度の危機」再来に向かっているということなのか。
 ただ、そもそも5月の米株は反落が起こりやすいということがある。5月末はヘッジファンドなどの中間期末となるため、ポジションの手仕舞いが入りやすい、「セル・イン・メイ」の影響が大きいだろう。
その「セル・イン・メイ」が文字通り、5月だけで一巡となったのが昨年であり、6月以降に持ち越されたのが2008年、2006年などだった。短命に終わった前者と、長期化した後者の違いの一つに金融政策があった。後者は金融引き締め局面にあったことが、株の反落を長引かせた可能性がある。
そういった観点でみると、今回の場合、「危機」再来懸念もある中で、金融緩和は継続、場合によっては強化も視野に入れた状況になっている。その意味では、名実ともに「セル・イン・メイ」で、株反落が短命に終わった昨年に、環境的には似ている。

<月間アウトルック=6月>

 ところで、6月の金融市場のアノマリーに、米長期金利が天底をつける、重要な基調転換が起こりやすいということがある。このアノマリーからすると、年初来の最低更新となってきた米長期金利低下が6月にかけてクライマックスを迎えるといった見通しになる。
 米金利が年初来最低更新となってきたのは、基本的にはこれまで述べてきた「100年に一度の危機」再来懸念に伴う動きだ。その意味では、米金利低下がクライマックスを迎えるなら、それは「危機」再来が未遂に終わる可能性が高いということだろう。
 2008年9月リーマンショックから始まり、2009年3月の米株底打ちまで続いた「100年に一度の危機」で、クロス円は軒並み大暴落となった。その意味では、「危機」再来なら、クロス円は下落リスクが続くだろうし、その「危機」の主役、ユーロはまだ厳しいだろう。
 しかし、「危機」再来が未遂に終わるようなら、ユーロもクロス円もこの間の急落が一息付く可能性が出てくる。ドルについては、年内利上げが困難になったままなら、ドル高サイドの展開は厳しいのではないか。(了)

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2010.05.31 | FXレポート

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吉田 恒(よしだひさし)

プロフィール

吉田 恒(よしだひさし)
1962年、青森県生まれ。1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社、2004年1月より同社の代表取締役社長就任。また、投資情報コングロマリット、 T&Cグループの持ち株会社であるT&Cホールディングス取締役にも2004年2月より就任。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。グローバル投資情報「G20マーケットインサイト」の編集責任者。また一般投資家向け為替リアルタイム市況「fx wave」の運営責任者、さらに一般投資家向けの為替および株式講演会を精力的に全国展開している。2000年からの米株バブル崩壊暴落、2002年の円急落、昨年2007年8月の円急騰など大相場予測の精度に定評がある。「わかりやすい、役に立つ、当たる」として顧客満足度の高さではFX界随一との呼び声が高い。

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